「高級家具」は捨てなさい。東向きのダイニングで朝のコーヒーを極上にする美学
「高級家具」は捨てなさい。東向きのダイニングで朝のコーヒーを極上にする美学
いい加減、目を覚ましてはどうだろうか。多くの人が「高級感のある家」を求めて、カタログをめくり、高価なイタリア製ソファや大理石のカウンターに大金を投じている。しかし、その結果はどうだ。どこかチグハグで、生活感と虚栄心が同居した落ち着かない空間になってはいないか。
断言しよう。本物の高級感とは、高価な「物」が作るのではない。そこに差し込む「光」と、それを受け止める「空間の質」が決めるのだ。特に、一日の始まりを告げる朝のダイニングにおいて、その差は残酷なほどに現れる。
勘違いだらけの「高級感」の正体
世の中の多くの家は、南向きの大きな窓を盲信している。だが、朝のコーヒーを最も美味しく、空間を最も美しく演出するのは「東向きの光」だ。低い角度から差し込み、壁を長く這い、微細な塵さえもキラキラと輝かせるあの光こそが、最高のインテリアなのである。
予算が限られているなら、まずやるべきは高い建材を選ぶことではない。光の通り道をデザインすることだ。私が提唱する住宅設計の基本は、足し算ではなく引き算にある。余計な装飾を削ぎ落とし、壁の質感と光のコントラストを際立たせるだけで、安価な素材であっても驚くほどの気品が宿る。
予算内で「本物」を演出するテクニック
「お金をかけずに高級感を出したい」という甘い考えを持つ読者も多いだろう。だが、それは可能だ。ただし、知性が必要になる。以下の3つのポイントを叩き込んでほしい。
1. 「面」のノイズを消し去る
高級感の天敵は「ノイズ」だ。コンセントの位置、ドアの枠、窓のサッシ。これらが視界にガチャガチャと入り込むだけで、どんなに高いテーブルを置いても台無しになる。壁一面を真っ白な左官仕上げにする必要はない。しかし、視線が抜ける先の壁だけは、何も置かない「沈黙の空間」を作るべきだ。これこそが、失敗しない家づくりにおける鉄則である。
2. 光を「溜める」場所を作る
東向きの窓から入った光を、そのまま逃がしてはいけない。光を反射させる「白」の使い方が鍵だ。床をダークカラーにするなら、壁は徹底して明るいトーンにする。すると、光が壁に当たり、空間全体が柔らかい光に包まれる「光の溜まり」ができる。この繊細な現象をあらかじめ建築パースで確認し、シミュレーションしておくことが、完成後の後悔をなくす唯一の方法だ。
3. 朝のコーヒーが「主役」になる背景を作る
週末の朝、ダイニングテーブルに座る。そこにあるのは、一杯のコーヒーと、窓から差し込む斜めの光。そして、その光によって浮かび上がるテーブルの木目。これだけでいい。背景が静かであればあるほど、日常の何気ない行為が映画のワンシーンのように昇華される。本物の贅沢とは、こうした「時間の質」そのものを指すのだ。
2026年の暮らしに、虚飾はいらない
現代において、家はもはやステータスを示すための道具ではない。自分自身の精神を整えるための聖域であるべきだ。私が公開しているポートフォリオを見れば、言葉の意味がわかるだろう。そこにあるのは豪華なシャンデリアではなく、計算し尽くされた光の軌跡だ。
流行りのデザインに流され、後から「何か違う」と頭を抱えるのはもう終わりにしよう。本物はいつだってシンプルで、そして厳しい。だが、その厳しさを乗り越えた先に、毎朝コーヒーを飲むだけで心が震えるような、最高の日常が待っているのだ。



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