「美しい」は「正しい」から生まれる。真の豊かさを叶える環境設計の思考法



「美しい」は「正しい」から生まれる。真の豊かさを叶える環境設計の思考法

「サステナブルな建築」と聞くと、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。

もしかすると、少し質素で、我慢が必要で、デザインというよりもスペック重視の無骨なものを想像される方がまだ多いかもしれません。あるいは、太陽光パネルが屋根に載っただけの家を思い浮かべるでしょうか。

実は、私たち建築家が考える「サステナブルなラグジュアリー」は、それとは全く対極にあります。それは、「我慢」ではなく「解放」であり、「スペック」を超えた「体験の質」そのものです。

今日は、河添建築事務所(KAWAZOE-ARCHITECTS)の設計テーブルの上で、私たちがどのように環境性能と美意識を高度にバランスさせているのか、その思考の裏側をお話ししたいと思います。

「見えない空気」をデザインするという贅沢

ラグジュアリーな空間の本質とは何でしょうか。
高価な石材、特注の家具、広大な面積。もちろんそれらも要素の一つですが、最も根源的な贅沢は「ノイズがないこと」だと私は考えています。

ここでのノイズとは、音だけではありません。「暑い」「寒い」「眩しい」「暗い」といった、身体的ストレスという名のノイズです。

高度な断熱性能と気密性能を持った空間は、魔法瓶のように外気温の影響を遮断します。冬の朝、ベッドから出るのが億劫にならない。真夏の窓辺でも、柔らかな光だけを取り込み、熱波を感じない。この「温度のバリアフリー」こそが、思考をクリアにし、居住者の感性を研ぎ澄ますキャンバスとなります。

私たちが住宅設計を行う際、窓の位置一つ決めるにも、単なる眺望だけでなく、太陽高度や風の通り道を徹底的にシミュレーションします。それは、エアコンの風に頼らずとも心地よい、目に見えない空気の質感をデザインするためです。

「性能が良い」というのは、光熱費が下がるという経済的メリット以前に、「空間の純度が高まる」という審美的なメリットを生み出すのです。

経年変化(パティーナ)を愛でる素材選び

次に、素材の話をしましょう。
サステナビリティの観点から言えば、長く使い続けられることこそが最大の環境貢献です。しかし、単に「耐久性が高い」だけでは不十分です。

新建材と呼ばれる工業製品の多くは、完成した瞬間が最も美しく、そこからは劣化の一途を辿ります。一方で、自然由来の素材――無垢の木、石、土、あるいは適切に扱われたコンクリートや金属――は、時間の経過と共に「汚れ」ではなく「味わい(パティーナ)」を帯びていきます。

私たちがクライアントによくお伝えするのは、「30年後の姿を想像して素材を選びましょう」ということです。

例えば、あるプロジェクトでは、メンテナンスフリーを謳う樹脂製のサイディングではなく、あえて地域の気候風土に合った焼杉や、地元の土を使った左官仕上げを提案することがあります。初期コストや手間はかかるかもしれません。しかし、傷さえも歴史として刻み込み、親から子へと受け継ぐことができる素材は、長い目で見れば廃棄物を減らし、何より所有する喜びを深めてくれます。

これこそが、真のサステナブルなラグジュアリーではないでしょうか。Perspective / Thoughtのページでも触れていますが、建築は時間と共に成長する生き物のような存在であるべきです。

テクノロジーが支える美学

「環境配慮」と「自由なデザイン」はトレードオフ(二律背反)だと思われがちです。大きな窓を作れば熱が逃げる、複雑な形状にすれば気密が取りにくい、といった懸念です。

しかし、現代の建築技術は、この矛盾を解決しつつあります。

例えば、トリプルガラスや高性能なサッシ枠を用いることで、断熱性を損なわずに大開口を実現し、庭の緑をインテリアの一部として取り込むことが可能です。また、軒(のき)や庇(ひさし)の深さをパラメトリックに計算することで、夏の日射を遮りつつ、冬の暖かな陽だまりをリビングの奥まで届けることができます。

私たちのMetaverse / Parametric Labでは、最新のシミュレーション技術を用いて、意匠性を犠牲にすることなく環境性能を最大化するスタディを繰り返しています。美しさを諦める必要はありません。科学的な裏付けがあれば、大胆なデザインこそが最も理にかなった環境装置になり得るのです。

オーナーの美意識が地球を守る

最後に、最も重要な視点をお伝えします。それは、建築主である皆さんの「選択」そのものが持つ力です。

これからの時代、ハイエンドな建築におけるステータスは、「どれだけ豪華か」から「どれだけ倫理的(エシカル)か」へとシフトしています。

エネルギーを浪費するガラスの塔ではなく、周囲の環境と調和し、エネルギー自給率が高く、地域の素材や職人の技術を活かした建築。そうした空間に住まい、働くこと自体が、洗練された知性の表明となります。

河添建築事務所では、クライアントの皆様が抱く理想のライフスタイルを、環境負荷の低減というグローバルな課題解決とリンクさせ、唯一無二の建築として昇華させるお手伝いをしています。

「環境に優しい家」を作りたいのではありません。「環境と共生することが、最高に気持ちいい」という空間を作りたいのです。

もし、あなたがこれからの住まいやプロジェクトにおいて、表面的な豪華さではなく、本質的な豊かさを求めているのであれば、ぜひ一度、私たちのポートフォリオをご覧ください。そこには、静謐でありながら力強い、サステナブルな美学の実践例があります。

建築は、建てて終わりではありません。そこから長い長い、時間との対話が始まります。その対話を、美しく、心地よいものにするために、私たちは全力を尽くします。

思考を深め、対話を重ね、あなただけの「正しい美しさ」を見つけに行きませんか。

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